2009/06/08

ネット違法書き込み 隠語で摘発逃れ

 「クリスタル」は覚醒剤、「¥」は援助交際…。インターネット掲示板への書き込みの中に、薬物や児童買春など違法性の高い情報の「隠語」があふれている。事業者や捜査当局の検索に引っかかる用語を避け、書き込みの削除や摘発を逃れるためだ。新たな隠語が次々と生まれ、検索の“網”とのいたちごっこが続く中、最近では音声や画像で有害情報を伝える手法も現れた。こうした書き込みを防ぐ手はなく、「地道に削除していくしかない」(関係機関)のが現状だ。(道丸摩耶)

 ■いたちごっこ

 「白の透明∬」「氷、レベルが高いです」

 警視庁組織犯罪対策5課などが昨年11月、覚せい剤取締法違反容疑で逮捕した男が、ネットの無料掲示板に出していた覚醒剤の広告だ。「S」や「氷」は覚醒剤を指す隠語で、掲示板には「P1本 12000」とも書かれていた。Pは「ポンプ」の頭文字で、覚醒剤を使用する際に使う注射器のこと。つまり、この書き込みは「注射器付きで1万2000円」を意味している。

 同課によると、覚醒剤は他にも「アイス」「クリスタル」「アン(成分アンフェタミンの略)」▽大麻は「野菜」「93(草)」▽合成麻薬MDMAは「バツ」「ペケ」「揺頭丸(ようとうがん)(中国語)」-など、さまざまな隠語で呼ばれている。

 こうした隠語は児童ポルノやわいせつ画像、児童買春などの世界でも広く使われている。例えば「炉」は「ロリータ(少女性愛)」、「無臭」は「無修正」、「¥」は「援助交際」を指すといった具合だ。

 背景には、掲示板の運営業者やプロバイダー、捜査当局が、定期的に違法な用語の検索をかけていることがある。「覚醒剤」「援助交際」など直接的な表現は検索に引っかかり削除されやすいが、隠語であれば検索の“網”をかいくぐる可能性が高いからだ。

 ■「ネット語」

 とはいえ、他人に通じない隠語なら、書き込んでも意味はない。フィルタリング会社「デジタルアーツ」(東京都千代田区)は「コギャル語が生まれたように、隠語は新しい『ネット語』とみた方がよいのでは」と分析する。つまり、隠語の多くはある程度の“市民権”を得ており、新たなキーワードに加えることで、検索で見つけることが可能になるというのだ。

 会員制の掲示板を運営する「ヤフー」(港区)は、専用システムを使って掲示板の書き込みをチェックしているほか、約200人が24時間体制で内容を監視している。新たな隠語を検索できるようキーワードを随時更新。利用者からの通報も受け付け、中傷やわいせつな内容など不適切と判断された書き込みを削除している。

 こうしたことから、新たに生まれたのが、文字以外を使って情報を伝える手法だ。違法・有害情報の通報を受ける「インターネット・ホットラインセンター」(同区)によると、出会いを目的にして連絡先を書き込むことを禁止するサイトに、写真で撮ったメールアドレスを画像で貼り付けたり、電話番号を読み上げた動画をアップするなど、検索に引っかからないよう工夫して自分の連絡先を伝えようとする手口もみられるという。

 同センターは「違法な書き込みを完全に防ぐには、管理者が投稿内容をすべて事前に審査するしかないが、それを法律で義務化するのは難しい。結局は、地道な検索と削除を繰り返すしかない」としている。


連絡先を伝える手口として写メで撮ったメールアドレスというはありましたね。

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